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渋沢栄一の地域ブランド戦略

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私は30年以上、3,000件を超える地域ブランド戦略を手掛けてきました。その実体験から、地域の活性化にはアメリカ由来のイノベーション戦略ではなく、地域の歴史や文化を踏まえた「温故知新」の考え方が必要だと確信しています。そこでこのコラムでは、私が地域創生の視点で取材した歴史秘話を紹介したいと思います。

今回は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」や2024年発行の新一万円札で注目を集める日本資本主義の父・渋沢栄一の歴史秘話をご紹介します。「渋沢流・地域ブランド戦略」ともいえる逸話で、地域創生のヒントが詰まっています。

目次
  1. 日本初の株式会社が静岡に設立された理由
  2. 元幕臣たちを救いたい!
  3. 心の持ちようを変える

日本初の株式会社が静岡に設立された理由

渋沢栄一は明治初期の混迷する日本に銀行や株式会社をつくり、約500もの企業経営に携わった日本経済の立役者です。

最初の株式会社は明治2年、静岡藩(今の静岡県)で設立されました。歴史上は、藩の財政を立て直すための設立とされていますが、地元に伝わる秘話を読み解くと、「静岡茶」をブランド化した人間ドラマが浮き彫りになります。

話は明治維新直後に遡ります。幕臣だった渋沢栄一は徳川慶喜の弟・昭武に付き添ってパリへ渡航していましたが、日本の急変を聞いて明治元年末に帰国しました。変わり果てた日本の姿に戸惑いながら、かつての主君・徳川慶喜を訪ねて謹慎先の静岡藩に出向いたところ、慶喜に藩政の立て直しを頼まれ、静岡に留まることにしました。そこで渋沢の目を奪ったのは、慶喜を追ってきた多くの元幕臣たちの姿だったそうです。彼らは幕府という心の拠り所を失い、勝海舟の勧めで茶の栽培を始めたものの、経験も資金もなく困り果てていたのです。

渋沢は心から、元幕臣たちが茶農家として再出発できる体制を整えたいと思ったそうです。
そしてパリで学んだ知見を生かして株式会社の設立を思い立ちました。ただ渋沢が静岡に滞在した期間はわずか1年足らず。その短い間に、茶農家に資金援助する銀行の機能と、茶を売る商社機能を併せ持った「商工会所」を立ち上げたのです。いかに元幕臣たちを救いたかったか、彼の熱意が伺えます。

徳川慶喜の邸宅に会社を設立した渋沢栄一。
2人が眺めた庭園は今も健在だ(静岡市・浮月楼)

元幕臣たちを救いたい!

史料によると慶喜を追ってきた元幕臣はおよそ13,000人。そのうち静岡藩で賄えたのは5,000人程度だったので、残り8,000人は失業したことになります。そんな彼らに勝海舟が茶の栽培を勧めたのは、新政府が輸出品として茶を奨励していたからでした。海外を知る渋沢は、この話に大きな可能性を感じたのでしょう。静岡で茶を作ればどんどん売れて、慶喜も元幕臣も藩政も、すべてが救われると確信したのです。ほんの1年足らずの短い期間に、茶の生産と販売の支援体制を整えた理由がよくわかります。

その後、元幕臣たちは「投資してくれた人の恩に報いたい」という強い想いで、茶の栽培に励んだそうです。その想いはやがて静岡茶の急激な発展に繋がり、静岡の清水港は茶の輸出において、全国でも中心的な役割を果たすようになりました。こうして「静岡といえばお茶」という地域ブランドが全国に定着したのです。

心の持ちようを変える

渋沢栄一は「世の中の事はすべて心の持ちよう一つでどうにでもなる」と名言を遺しています。
静岡茶も、失意のどん底にいた元幕臣たちが心の持ちようを変えたからこそ発展したのでしょう。今、コロナ禍に疲弊する地域にも人々の心を明るくする施策が求められています。今回ご紹介した渋沢栄一のエピソード、参考になれば幸いです。

私の講演ではこのように、地域創生の視点で見た歴史秘話をふんだんに交えて、地域活性化の戦略ポイントをお話します。ぜひ、ご期待ください。

殿村美樹 とのむらみき

株式会社TMオフィス代表取締役PRプロデューサー、一般社団法人地方PR機構 代表理事

1961年2月26日京都府宇治市に生まれる。89年にPR専門のTMオフィスを創業し、3年後には株式会社TMオフィスを設立。代表取締役に就任する。地方と文化のPR戦略に特化した事業展開で約3000件の実績を積み、独自のPRノウハウを確立。これまでに 「今年の漢字」(漢字ブーム) 「佐世保バーガー」 「ひこにゃん」(...

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