2022年4月から労働施策総合推進法によって、いよいよハラスメント防止措置がすべての事業所に義務化されます。ハラスメント問題は、職場における日々の人と人とのコミュニケーションの質の問題ですが、併せて労働環境の問題です。決して、個人の問題ではなく、組織の問題であることを忘れないで取り組みを進めていただきたいと思います。労働環境の悪いところで、ハラスメント問題は起こりやすいというのはデータでも明らかになっています。労働環境を整えないで、ハラスメントは予防できないといっても過言ではありません。
労働環境に潜む原因
しかし、労働環境と一言でいっても、多種多様な視点での取り組みが必要となります。労働時間は把握していますか?長時間労働が黙認されていませんか?休暇は取得できているでしょうか?業務遂行する人が偏っていませんか?すべての従業員が、躊躇なく報連相できているでしょうか? ひとつでも「ん?」という点があったら要注意です。そんなところにハラスメントの原因が見え隠れしています。このように労働環境の視点からでも予防のためにできることはたくさんあるのです。しかし、得てしてハラスメントの対応は、何かしら問題が起きてからの対処になっていることが多いのが実情ではないでしょうか?ぜひ、労働環境の問題にも目を向けていただきたいと思います。
感情はコントロール可能
さて、では私たちはコミュニケーションの質を考える上で、日常的にどのようなことに取り組んでいけばよいのでしょうか?
最近ハラスメント研修で私が強調しているのは、研修内容の「アップグレード」。目指すのは、これはダメ、こんなことを言ったらいけない、というダメダメからの脱却です。確かにこれまでの取り組みはハラスメント言動の抑止になりますが、本質的に理解に繋がりにくく、再発しやすいのです。
今、お伝えしているのは、「このように伝えてみたらどうでしょう?」という提案型のアプローチ。今まで当たり前のようにつかってきた(ハラスメントになりがちな)指導手法を手放してみる。
難しそうですか?いえ、大丈夫です。トレーニング次第では3週間ほどで効果が出ます。まずやっていただくのは、感情のコントロールです。皆さんは、感情はセルフコントロールできないと考えていますか?実は、感情の製造元は自分自身です。だからコントロール可能なのです。
「認知のゆがみ」解消のトレーニング
負の感情が起きた時に、反射的に暴言、暴力、ハラスメントに結びつくような言動をしないというトレーニングをします。まずは、感情と行動の間に理性を介入させることができなければなりません。
そして、自分自身の感情の製造過程を知っていただいて、その感情の製造過程に自分自身で変化を与えるトレーニングをします。「とらえ方変換」(リフレーミング)や、欠点課題にばかりに注目をせず、視点をあるものに向け、それを認める、承認です。このようにネガティブ視点が癖になっている「認知のゆがみ」を解消していきます。このトレーニングを続けることで、今まで「相手が悪い」「こんなことをするから」と思いこんでいたネガティブな感情を、少しずつ手放すことができるのです。
次回に詳しくそのコントロール法をお伝えしていきましょう。
桑野里美 くわのさとみ
特定社会保険労務士、有限会社ビジネス・パートナー・オフィス代表取締役、一般社団法人ひとみらい共育LABO専務理事
1996年 社会保険労務士事務所開業。 2004年 有限会社ビジネス・パートナー・オフィス設立し「企業とひとのかけはしに」をモットーに労務管理コンサルティングを始める。 2022年 一般社団法人ひとみらい共育LABO設立。「大人の発達障害と雇用社会」をテーマに発達障害の特性を雇用社会に活かす仕組みづくりを研究。 ...