【講師コラム|木村悠】目標達成に才能はいらない。必要なのは「続けられる仕組み作り
NEW
元ボクシング世界チャンピオンの木村悠です。現役時代は商社に勤めながらの二刀流で「商社マンボクサー」として活動していました。現在は株式会社ReStartの代表取締役として、健康経営者クラブや福利厚生など健康に関する事業を複数展開しています。経歴が特殊なため企業や団体、学校などでモチベーションアップや目標達成の講演などもしています。
- 目次
世界王者は意志が強い?二刀流を支えたのは意志ではなく仕組み
その時に受講した方からよく言われる言葉があります。「意志が強いから続けられるんですよね」——講演やダイエット指導の現場でも、何度もかけられてきた言葉です。しかし正直に言うと、私は意志の強さにはあまり自信がありません。世界チャンピオンになった今でも、面倒なことは面倒ですし、甘いものだって食べたくなります。それでも減量に成功し、商社マンとボクサーの二刀流を続けてこられたのは、意志力ではなく「仕組み」で自分を動かしてきたからだと思っています。
現役時代、私が最も苦しんだのは「減量」でした。ライトフライ級という階級は、日本人選手の中でも体重管理がシビアな部類に入ります。仕事終わりにジムへ直行し、疲れた体で厳しい食事制限をこなす。最初の数年は炭水化物をほぼゼロにする、いわゆる極端な糖質制限をしていました。結果は出ますが、長くは続きません。頭が回らなくなり、商社の仕事でミスが増え、イライラして周囲にも当たってしまう。試合が終わった反動で暴飲暴食し、また一からやり直す。この繰り返しで、減量には成功しても、生活そのものが壊れていくような感覚がありました。
極端な制限からの脱却。白米を食べながら痩せる理論への転換
転機になったのは、白米をあえて「がっつり」食べながら痩せる方法にたどり着いたことです。炭水化物を悪者にするのではなく、量とタイミング、そして他の食事とのバランスを設計し直す。我慢を積み重ねるダイエットから、仕組みで自然と結果がついてくるダイエットへの転換でした。これが後に「木村式白米ダイエット」としてまとめ、今も全国の会員の方々に指導している方法の原点になっています。
この経験から学んだのは、正しい理論や考え方を身につけることと、それを続けられる仕組みや習慣に落とし込むことは、どちらか一方だけでは成り立たないということです。極端な糖質制限は、短期的には体重を落とせても、体づくりの理論としても継続のしやすさとしても、そもそもの土台が間違っていました。白米ダイエットは、体のメカニズムに沿った正しい理論に基づいていたからこそ、無理なく仕組み化でき、習慣として定着させることができたのだと思います。目標達成のポイントは、まず正しい理論や考え方を学ぶこと、そのうえでそれを日々続けられる仕組みと習慣に変えていくこと、この両輪をそろえることにあります。
このとき気づいたのは、ダイエットも仕事の目標達成も、構造はまったく同じだということです。多くの人が目標を立てるとき、まずゴールを決め、次に「頑張る」という抽象的な決意で終わってしまいます。しかし頑張る気持ちは、忙しい日や疲れた日には真っ先に消えてなくなります。私が減量とビジネスを両立できたのは、頑張る対象を「気合い」ではなく「行動の設計」に置き換えたからです。学んだ理論を仕組みと習慣に変えるために、具体的には三つのことを徹底してきました。
逆算と記録が鍵。目標を「具体的な行動」へ分解する3つの鉄則
一つ目は目標をできるだけ小さな単位に分解することです。「痩せる」ではなく「白米は毎食このタイミングでこの量を食べる」というレベルまで落とし込みます。減量成功の一番のコツは、この逆算にあると思っています。私が戦っていたライトフライ級のリミットは48.9キロ。試合の1ヶ月半前は57キロほどまで増えていることが多く、そこから約8キロを計画的に落とす必要がありました。まず試合日から逆算して「1ヶ月半で8キロ」という大枠を決め、それを週単位、さらに一日単位まで割り、「今日は何グラム落とすべきか」を毎日数値で把握します。そのうえで毎朝同じ時間に体重計に乗り、逆算した数値どおりに進んでいるかを確認します。目標体重と現在地の差が具体的な日々の行動に変換されているからこそ、途中で不安になっても軌道修正がしやすくなります。ゴールが遠いほど、目の前の一歩を具体的にすることが継続の鍵になります。
二つ目は記録をつけることです。体重や食事内容を毎日記録していると、数字が裏切らないことがわかってきます。感覚だけに頼ると、「今日はまあいいか」という例外がすぐに積み重なってしまいます。記録は自分を責めるためではなく、次の一手を決めるための材料です。ビジネスの現場でも、商談数や行動量を可視化していたからこそ、結果が出ない時期も冷静に軌道修正できました。
三つ目は、頑張らなくても続く環境をつくることです。ジムに行く時間を先にスケジュールに組み込み、選択肢自体を減らしておく。白米ダイエットも「食べていいもの」を明確にすることで、毎回悩んで意志力を消耗する場面をなくしています。目標達成が続かない人の多くは、能力ではなく、日々の判断の回数が多すぎることに疲れてしまっているのではないかと思います。
実際、この考え方に切り替えてからは、試合前の減量にかかる時間も体への負担も大きく変わりました。以前は減量期間の後半になるとリバウンドと空腹感に悩まされていましたが、日々の食事量とタイミングをあらかじめ決めておくようになってからは、体重の増減が安定し、練習の質も落ちなくなりました。感情に振り回されず、決めたことを淡々とこなすだけでいい状態をつくれたことが、現役晩年に結果を出し続けられた理由の一つだと思っています。
商社マンボクサーとして仕事と競技を両立していた頃も、経営者として複数の事業を動かす今も、根底にある考え方は変わりません。特別な精神力で乗り切るのではなく、続けられる仕組みを先につくっておくこと。そして、うまくいかない日があっても、それを失敗と捉えず、仕組みを見直すきっかけとして淡々と修正していくこと。これは、ダイエットにも仕事にも、そして子育てや勉強など、何かを継続させたいあらゆる場面に応用できる考え方だと感じています。
完璧を捨てて一歩踏み出す。小さな成功が大きな目標達成を導く
白米ダイエットは、ただの食事法ではなく、私にとって「無理をしないで結果を出す」ことを学び直させてくれた原体験でした。今も指導の現場で強調しているのは、最初から完璧を目指さないということです。三食すべてを変えようとせず、まずは一食だけ、白米の量とタイミングを見直す。それだけで体は少しずつ変わり始めます。小さな成功体験が「自分にもできる」という感覚を生み、それが次の行動を後押ししてくれます。
仕事の目標も同じではないかと思います。大きな数字や理想像から入るのではなく、今日一日、自分がコントロールできる小さな行動は何かを決める。それを記録し、うまくいかない日があっても仕組みのほうを見直せばいいのです。目標に向かって頑張っているのになかなか結果が出ないという方は、一度「頑張り方」そのものを、意志力から仕組みへと置き換えてみてください。小さな行動を積み重ねる先に、思っている以上に大きな変化が待っているはずです。
木村悠 きむらゆう
商社マンボクサー、元世界チャンピオン
1983年11月23日生まれ、千葉県千葉市出身。習志野高校でボクシングを始め、法政大学時代に日本一になる。 大学卒業後、数多く世界チャンピオンを輩出している帝拳ジムでプロデビュー 。その後、挫折をきっかけに商社に勤めながらのボクシング生活をスタート。仕事とボクシングを両立しながらの二刀流で世界チャンピオン...

