講演会・セミナーのキャスティング、講演依頼は講師派遣ナビコラム・インタビュー【講師コラム|ハロルド・ジョージ・メイ】世界が再評価する「日本企業の真価」―伝統・現場・信頼がつくる競争力

【講師コラム|ハロルド・ジョージ・メイ】世界が再評価する「日本企業の真価」―伝統・現場・信頼がつくる競争力

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『Don’t go to Japan』 最近こういった動画がInstagramやYouTubeなどSNSで数多く公開されています。日本を訪れた外国人観光客が作っている動画です。

日本に行っちゃダメ!――それは日本の悪口ではありません。日本に来てみたらあまりにも素晴らしく快適すぎて、自国に戻ってからその差に落ち込んでしまう、覚悟がないなら日本には行かないほうが幸せだよという警告です。帰国後のPost Japan Depression(日本ロス)という言葉すらあります。私は日本に暮らして40年以上になるオランダ人ですが、この気持ちがよくわかります。日本は食べ物、文化、自然や街の美しさ、治安の良さなどあらゆる面がユニークで素晴らしいです。こんなに突出して優れた国は他にはない…それは日本で働く人々や日本企業においても同様です。

目次
  1. 日本企業のユニークネス
  2. 長く続くという強さ
  3. 現場の力
  4. 人のレベルの高さ
  5. 日本はクリエイティビティの宝庫
  6. 強みを再認識して自信を取り戻す

日本企業のユニークネス

現在のビジネス環境は、「VUCA」(Volatility, Uncertainty, Complexity, and Ambiguity)という言葉で表現されることがあります。変動性(V)、不確実性(U)、複雑性(C)、曖昧性(A)が高まる中、企業にとって先を読むことは以前より難しくなっています。

「失われた30年」の中で、日本企業は欧米に比べ変化への対応が遅い、意思決定が慎重すぎる、イノベーションが弱いといった批判を受けてきました。それはある程度事実だと思います。しかし欧米型企業のように速く成長する事、速く利益を出すことだけが良いとは私は思いません。日本企業が長い時間をかけて培ってきた「信頼」「現場力」「品質へのこだわり」「長期的な関係を大切にする姿勢」は、短期的な数字だけでは測れない日本独自の大きな強みだと思います。先ほどのDon’t go to Japanにも通じるような唯一無二の日本の強みです。

長く続くという強さ

日本企業を考える上で、まず注目したいのが「長く続く企業」の多さです。

日経BPコンサルティングの調査によると、2020年時点で世界に存在する創業100年以上の企業は80,066社。そのうち日本企業は33,076社で、全体の41.3%を占めています。さらに創業200年以上の企業では、日本企業が1,340社、世界全体の65.0%を占めています。
世界には約3億6千万社の企業が存在すると言われる中、日本企業の長寿ぶりは際立っています。なぜ日本にはこれほど長く続く企業が多いのでしょうか。

理由は安定した社会環境や日本独自の文化など様々ありますが、私が特に興味深いと感じるのが「三方良し」。江戸時代の近江商人が大切にした経営哲学です。

「売り手よし。買い手よし。世間よし」という考えは、一度の取引で利益を得ることだけではなく、顧客や社会との関係を大切にしながら商売を続けることを重視しています。企業は単なる利益を生む器ではなく、社会との関係の中で長く存続させていくものと捉える考え方は、日本の商習慣の中に何世紀にもわたって存在してきました。日本のカスタマーサービスや顧客満足度が外国に比べて優れている理由も、この「三方良し」の精神から来ていると思います。それゆえに日本では顧客に愛され地域にも愛されて長く続く企業が多いのだと感じます。

現場の力

日本企業の競争力を語る上で、もう一つ重要なのが現場の力です。ビジネスにおいて約束を守ることは基本ですが、それを毎回、高い精度で実行することは簡単ではありません。製造業では一つの部品の遅れが全体の工程に影響し、サービス業では一つの対応が顧客の印象を左右します。

日本企業では、納期や品質を守ることが、長年にわたって仕事の基本として重視されてきました。問題が発生した場合にも、原因を調べ、関係部署が連携し、再び同じ問題を起こさないようにする。こうした積み重ねが、「この会社なら任せられる」という信頼につながります。そしてこうした競争力は絶え間ない改善によって作られています。

さらに重要なのは、改善が現場から生まれることが多いということです。実際に製品を作り、機械を動かし、顧客と接している人だからこそ気づける問題があります。私自身も工場で、従業員による改善点が書かれたポストイットが多数貼られた掲示板をよく目にしてきました。現場の小さな気づきを組織全体の力に変えている。そこに、日本企業の競争力の一つがあると思います。

人のレベルの高さ

企業の仕組みを実際に動かすのは人です。日本人のIQは世界トップレベルであり、高い識字率や計算力、応用力など教育水準が高いことも、日本企業の強みの一つでしょう。さらに誠実で几帳面で責任感が強い人が多いです。幅広い知識や技能を持ち、決められた手順を正確に実行し、周囲と協力して仕事を進める力は、製造業やサービス業にとって重要です。特に、複雑な工程を安定して運用するには、多くの人が一定以上の水準で仕事を行えることが、企業全体の品質につながります。その積み重ねが、「日本製なら安心できる」というブランドイメージを構築した一つの要因であると思います。

日本はクリエイティビティの宝庫

日本は「ゼロから新しいものを生み出すより、既存のものを改良するのが得意」という言葉をよく耳にします。私はこの言葉は必ずしも事実ではないと思っています。アニメ、マンガ、ゲーム、キャラクター、デザイン、建築、食文化。これらを見れば、日本には優れた創造性があるとわかります。ウォークマンやウォシュレットのように、既存の技術や生活習慣を組み合わせ、新しい価値を生み出した製品も多いです。生活をより便利により豊かに。日本企業のすごさはその創造性と実現力にもあると思います。

強みを再認識して自信を取り戻す

今日本企業に足りないものをひとつ挙げるとしたら、それは自信だと思います。私は1986年から日本で働いていますが、リゲインのCM「24時間戦えますか」が大ヒットした1989年頃は特に、日本は自信に満ち溢れていて勢いがありました。世界第二位の経済大国で、世界中チャンスがあればどこにでも飛んでいき大きな商談を決めてくる。世界が恐れおののきリスペクトする国、日本。

実は日本企業はあの頃から少しも変わっていないと思います。顧客との信頼、現場の改善力、品質へのこだわり、長期的な視点、人との関係を大切にする姿勢。日本にしかない独自の強みを今一度認識してほしいと思います。日本は世界中の旅行客からDon’t go to Japanと言われるように、非常にユニークで卓越した国。これからも新しい技術やマーケティングを取り入れ、伝統を守りながら新たな黄金時代を築いていく事ができると思います。

ハロルド・ジョージ・メイ

元タカラトミー社長、現アース製薬・キユーピー社外取締役、パナソニック顧問

ニューヨーク大学修士課程修了。ハイネケン・ジャパン、日本リ-バ(現ユニリ-バ・ジャパン)、サンスタ-、日本コカ・コーラ副社長を経て、2015年にタカラトミ-代表取締役社長となり、赤字経営から大幅黒字回復を成し遂げ、過去最高売上げ・最高利益を達成。2018年に新日本プロレスリング代表取締役社長兼CEOに就任。過...

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