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男性育休の推進を経営戦略にする方法

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男性産休の法整備に伴い企業はどのように取り組むべきか。経営戦略としての男性育休を推進するメリットについて、3児の父として管理職と育児を両立した社会保険労務士の天野勉氏に解説していただきます。

目次
  1. 女性育休よりも個別の対応が求められる男性育休
  2. 経営戦略としての男性育休推進
  3. 仕事の進め方にも大きなメリット(属人化の解消と介護休業対応の準備)

女性育休よりも個別の対応が求められる男性育休

令和4年は育児休業取得に関する法改正があり、特に男性育休を取り巻く環境が大きく変わりそうです。4月からは、企業の規模によらず育休を取得しやすい雇用環境を整備するとともに、対象となる社員へ個別に育休制度を周知し、取得を希望するかどうかの意向を確認することが義務化されます。さらに、10月からは「男性版の産休制度」が新設されます。

この制度は、子どもが生まれた場合、その父親は、出生から8週間以内に最大4週間の育休を2回に分けて取得できるというものです。従来の育休制度もそのまま残るため、最大4回の育休が取れるようになることから回数や期間の組み合わせの柔軟性が増し、より個人の事情に対応しやすくなります。言い換えると、あらかじめ時期を想定しやすい出産・産休後から1回の休みを長期間取得するケースが多い女性の育児休業に比べ、個々の対応が求められることになります。

経営戦略としての男性育休推進

上記の通り、男性育休は労務管理面で負担が小さくありません。そもそも男性が育休を取ることに対して否定的な意見を持つ中高年管理職も少なくないことから、法律で義務化されたからといってスムーズに男性の育休取得が進むとは思えません。そこで求められるのが、経営戦略として男性育休を推進していくことを社内外に発信することです。法律で義務づけられているからやむを得ないと消極的に対応するのではなく、積極的な姿勢で男性育休を推進していくことを示すことで、管理職も人事労務担当者も意識がはっきりします。

経営戦略とするためには経営上のメリットが必要になりますが、もっとも大きいメリットは、優秀な人材確保です。日本生産性本部が実施したアンケート調査をはじめとして各種調査で、「子どもが生まれたときに育休を取りたいか」という問いに対し、7~8割程度の男性社員が「取得したい」と答えています。つまり、男性育休取得に消極的な企業は、採用面で苦境を強いられることが予想されます。筆者は、大学でキャリア関係の講義や採用活動の支援を行っていますが、育休のことを会社選びの際の重要事項にあげる男子学生は少なくありません。また、子育て支援のNPO法人でも活動していますが、子育て世代の体験談で「上司に育休の相談をしたけど、まったく理解が得られなかったので転職した」というケースを耳にすることは枚挙に暇がありません。優秀な人材の確保、定着という点で男性の育休取得推進が避けられなくなってきていると言えるでしょう。

仕事の進め方にも大きなメリット(属人化の解消と介護休業対応の準備)

採用定着だけでなく、男性の育休を推進することは仕事の進め方そのものにも大きなメリットがあります。複数回、短期間、時期がランダム(準備期間が短い)という特徴がある男性の育休を推進するためには、人に仕事が付く「属人化」した状態の解消が不可欠です。育休を取る社員が職場にいなくても仕事が滞りなく進むようにする必要があるからです。属人化解消の第一歩は現状の把握です。ここでも前回ご紹介した「タスクシート」などが活躍します。筆者が働き方改革のコンサルティングを行うケースでは、この属人化解消により多くの非効率作業があぶり出され、改善されます。一時的に負荷が上がることもありますが、タスクシートを使えば使うほど生産性が向上し、利益率も上がっていきます。

また、男性が育休をスムーズに取れるような職場になると、介護休業への対応も可能になります。複数回、短期間、準備期間が短いという男性育休の特徴が、介護の特徴と似ているからです。育児や介護のことで一時的に休むことが過度なストレスにならず、職場もスムーズに対応できれば、社員自身も職場の同僚も働きやすい状況が維持されます。そういう企業が多くの求職者に選ばれるし、生産性を落とすことなく、利益を上げ続けていけるのではないでしょうか。

「法律で義務づけられたから」という消極的な姿勢ではなく、企業が生き残るため、より発展していくために不可欠な取り組みだという積極的な姿勢で、男性の育休取得推進に取り組んでいただきたいです。

天野勉 あまのつとむ

特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント

東京工業大学大学院修士課程修了。 化学メーカー、環境系コンサル会社で長時間労働を経験したのち、製造系人材派遣会社へ。 社会保険の未加入問題や長時間労働削減など働き方や生き方に直結する問題に取り組む中で、労働者の働き方や企業の働かせ方に疑問を感じ、本格的に労働法の勉強を始める。企業の管理職、双子の子...

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