EQはビジネス分野で大きな広がりをみせ、現在日本では1500社以上の企業様が人事マネジメント領域(採用、育成、配置、選抜など)で、EQを導入されています。昨今では教育分野においてもEQに注目が集まっており、私自身、小学校から大学、専門学校などの教育機関、PTAなど保護者向けの講演依頼が増えています。
EQ理論の詳細は後述しますが、EQ理論で提唱している「EQ能力」が、子どもたち、教育関係者、家庭を構成する家族、保護者の皆さまにも必要との認識が高まっています。
なぜ教育分野でEQが注目されているのか
その一つが、「非認知能力」とEQの関係性です。
米国のジェームズ・ヘックマン博士は、幼児期の教育が将来にもたらす影響についての研究で、就学前の幼児に対するIQ教育は効果が持続しなかったのに対し、非認知能力は教育によって高まり、その効果は終生続いたという調査結果を発表しました。
日本では国立教育政策研究所が2017年に「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」を発表しています。
報告書は、非認知能力を「自分と他者・集団との関係に関する社会的適応」及び「心身の健康・成長につながる行動や態度、そしてまた、それらを可能ならしめる心理的性質」と定義しており、それはEQと類似の概念であり、とても深い関係にあります。
そして二つめです。
本コラムのテーマ「EQ理論活用による、こころの距離の近づけ方」です。
教育関係者や保護者の間で現実に起こっている問題、課題、個人的で身近な悩み、その解決にEQが使えないかとのご相談とお問合せが増えています。
具体的には、学校においては、いじめや不登校の改善。先生自身の悩みも深く、自分自身はもとより生徒さんや保護者さんの対応。保護者さんは保護者さんで親子、家族、家庭、夫婦の関係であり、大きく捉えると「人間関係」に困っていらっしゃいます。
社会生活は「人間関係」を避けて通れない
どんな時代になろうと原点は人対人であり、人は自分以外の人との関係性において存在し、「人との関わり」を通して人は育ち、人間として成長します。
私はEQと出会い、感情能力を学ぶ中で「人との関わり」の鍵は、こころの距離にあると考えるようになりました。
お互いのこころの距離を近づけることは、人間関係を良好にし、人生において重要なテーマだと思います。
なぜEQ理論と「こころの距離の近づけ方」か
こころの距離が近い人といると安心(ホッと)できたり、なんでも話したくなったり、聞きたくなったり、聞いてあげたくなったり、支えてほしい、支えてあげたいという気持ちになりませんか。
その気持ちこそがEQ理論で提唱しているEQ能力のことです。相手の気持ちを識別し、理解することで、お互いの間に共感を生み出していたのです。
こころの概念は壮大ですが、こころの中に気持ちや感情は確実に含まれており、EQとは深い関係にあります。こころの距離を近づけるとは、気持ち=感情を合わせる、気持ち=感情を近づけることであり、EQを活用すれば、人間関係の様々な悩み、問題、課題の解決の糸口となることでしょう。
EQ理論とは
EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、1990年、現在エール大学学長を務めるピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士によって提唱されました。
両博士は、ビジネスパーソンを対象にした広範囲な調査研究を行ない、その結果、明らかになったのが「ビジネスで成功した人は、ほぼ例外なく対人関係能力に優れている」というものでした。これらの研究結果から、サロベイ、メイヤー両博士が提唱したのが「感情をうまく管理し、利用できることは、ひとつの能力である」というEQ理論です。
中でも、世界の心理学会が最も注目したのが「EQは後天的に開発可能な能力である」という画期的な発見です。私自身もそこに大きな魅力と可能性を感じて、今があります。
高山直 たかやまなお
高山直事務所 EQ Exective Master
1957年 広島県生まれ。日本におけるEQ理論の第一人者。1990年米国で提唱されたEQ理論を日本で初めて紹介し広める。 個人のやる気や情熱、「志」などの潜在的な能力や可能性が学歴に関係なく、公平、公正に判断される社会の創造を目指して、1997年株式会社イー・キュー・ジャパンを設立し、日本初のEQ事業をスタートさせ...