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講演講師 インタビュー / スタンフォード大医学部教授 西野精治 氏

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講演会講師インタビュー|著書「スタンフォード式 最高の睡眠」が30万部を超えるベストセラーに。睡眠負債という流行語を生みだし、スタンフォード大学医学部教授で睡眠と覚醒のメカニズムを研究している、西野精治(にしのせいじ)氏にインタビューしました。

目次
  1. 講演会やセミナーで聴講者に伝えたいこと
  2. 健康的な睡眠パターンとは
  3. 睡眠と覚醒、メカニズムの不思議
  4. スマホとの関係、良い睡眠とは
  5. 睡眠と体温、最高の睡眠を引き出す方法

講演会やセミナーで聴講者に伝えたいこと

ーー

睡眠に関して悩んでいる人は多く、講演会やセミナーなどを依頼される機会も多いと思います。その際、聴講者に1番伝えたいこととは何でしょうか。

西野

今まで睡眠というとあまり重要視されてなかったんですよ。時間にしたら人生の3分の1ぐらい眠っているんですけど、眠っている間に起きている時にできないような機能を睡眠は担っていて。
1番重要なのは体のメンテナンスで、起きているときは内臓も脳も使わないとだめだから、それを休んでいる時にリフレッシュする、代謝物を除去する、とか、(睡眠には)いろんな役割があるということなんです。非常に重要な機能だ、ということです。

ーー

先生の著書にもありますが、睡眠改善に取り組むなら、まず「睡眠について正しい知識を身に付けること」と書かれています。
ネット社会の今、多くの情報が飛び交っていますが、「正しい知識」についてお聞かせください。

西野

特に日本は根拠のない、誤った不確かな情報が大変多いんですね。それは非常に困る。専門家が書いた良書はたくさんあるのですが、読みにくいというのがあって、だからできるだけやさしく、睡眠の仕組みを解説するということですね。
睡眠といっても、睡眠だけではなくて、睡眠に関連した生理現象、自律神経であるとか、体温の変化とか、それとリズム、そういうことも含めて解説して、それがどういった障害とか、問題につながっているのか、というのを説明したいですね。

健康的な睡眠パターンとは

ーー

睡眠負債という言葉を使われていますが、これは睡眠不足とはどう違うのでしょう。

西野

睡眠負債という言葉は医学用語ではないのですが、慢性の睡眠不足で知らないうちに借金のように負債が積み重なって、簡単に返済できない、という意味です。そういう状態が続くといろんな疾患率が高くなり、パフォーマンスが落ちる。放っておくと身も心も破滅する、借金で首が回らないような状況になる、ということです。
実際にどう違うかというと、症状というのは短期の(睡眠)不足でも同じような症状が出るんですけど1日や2日では簡単に返済できない、知らないうちに積み重なっているということなんです。

ーー

負債を返すためには、良質の睡眠を取ることが大事だと思うのですが、そのためには具体的にどうすればいいのでしょう。

西野

1つは、やっぱり(睡眠の)量も大事なんですよね。どれだけ長く、自分に必要な量、長さを確保するか。ところが、現在、忙しくて、ほとんどの人が、体が必要とする睡眠時間を確保できないので、それであれば、質を高めて不足分を返済しようとなってくる。
健康な睡眠のパターンってあって、どういうことかというと、ノンレム睡眠とレム睡眠があって…レム睡眠は眠っているのに脳が起きている時と同じように活発に働いて夢を見ることが多いということ。それともう一つ、健康な睡眠のパターンとは最初に深いノンレム睡眠がでるんです。それが約90分ぐらい。その後、短いレム睡眠がでて、明け方まで4回、5回繰り返す。それで明け方は深い睡眠がでなくて、レム睡眠が長くなる。
だから、簡単にいうと、健康な睡眠というのは、睡眠の重要な役割を前半部で果たして、後半部はどちらかというと起きる準備をしている。そのパターンが乱れると、目覚めが悪い、起きれない、となってくる。
睡眠障害、睡眠時の無呼吸症候群などで深い持続する睡眠が取れないと、明け方に深い睡眠が出て、起きれない。リズムが後ろにズレた場合、コロナの時はそういう人多かったんですけど、今言ったような原因で睡眠のパターンが乱れ、目覚めも悪い、なかなか起きれない、起きても意欲がない、日中の集中力がなくなる、そういう問題につながってくるということなんです。

ーー

睡眠の入りが重要ということですが、いざ寝ようとすると、逆にいろいろな思いが頭の中を巡ってスムーズな入眠ができず、時間だけダラダラ過ぎていくなどで悩まされる人もいます。
眠れない時は「羊を数えればいい」と教えられましたが、あれは良質の睡眠への近道なのでしょうか。

西野

それ(羊の話)は欧米でよく言われるんですけどね。(実は)1匹、2匹ではなくて、シープ、シープって口で言って、柵を羊が超えているようなイメージを持って…言う。カウントというのではなく1、2という数字ではなく、(柵を越えていく)それに合わせてシープ、シープと言う。単調だから(良い)という意味なんです。
でも日本で羊が1匹、羊が2匹とか言ったら、それはもとの詩歌とは違ってくる(笑)。もともとも、あまり根拠がないと言えばないんですけどね。まあ眠る前はできるだけ単調に、それで脳を使わない、リラックスするというのが大事なんです。

ーー

「羊を数える」は、いわゆる誤った情報の1つと考えてよろしいでしょうか

西野

そうそう。欧米の言葉を日本語に訳して、しかも羊が1匹、羊が2匹と数えてとか…それではかえって眠れないということですね(笑)。

睡眠と覚醒、メカニズムの不思議

ーー

日本人の睡眠時間は少ないと言われますが、世界的にみてもそうなのでしょうか

西野

いろんな調査方法があって、それによって睡眠時間そのものの長さとかは比較できないんですけど、(例えば)OECD(経済協力開発機構)って、数年に1回、各国の睡眠時間の比較をしていますが、それでは世界で1番短いのは日本ですね。一時韓国が上だったんですが、また日本が抜いてますね。
それと、欧米では女性の方が男性より長く眠ることが多いんですが、日本とかアジアの国では女性の方が、睡眠時間が短くて、そういう傾向が顕著ですね。

ーー

睡眠時間と平均寿命に関係はあるのでしょうか

西野

それは別ですね。平均寿命はいろんな要因が関与するので、もちろん住む地域とかもあって一概に言えないんですが…。

ーー

先生の人生の歩みについても教えていただけますか。先生は大阪・河内長野市出身、高校は大教大付属天王寺校舎と伺っていますが、そのころの夢は何だったのでしょう。

西野

高校のころは…あんまり勉強しなかったので(笑)。高校の中でも劣等生でしたね。でも多少、脳とか脳の研究とかそういうことに興味があったんですよ。医学も興味があって。それで精神科医になったんです。
睡眠といったら、1950年までは暗くって音が聞こえなくなったら自動的に眠ると考えられていた。ところが動物実験でそんなことしても眠らなくて、むしろ脳のある部位にダメージを与えたりしたら眠ったような状態になることが分かって、脳の自発的な活動で、そういう睡眠とか覚醒が起こされているということが分かった。つまり神経科学ですね。そういうことに興味がありましたね。

ーー

まだまだナゾの多い領域だと思いますが、先生から見て睡眠については、どの程度解明されたと考えていいのでしょうか。

西野

ほとんど分かってなくて、まだ10%ぐらいしか分かってないんじゃないですか。睡眠障害というのは63、64に分類されているんですよ。国際的な基準では。今、第3版で10年ごとに改定されているんですが、大幅な改定がされている。
最近になってやっと、そういう病態とか、病気に基づいて分類しようとなって。他に比べて病気、病態について分かっていることはほとんどないですね。

スマホとの関係、良い睡眠とは

ーー

睡眠研究の第一人者の先生に愚問かもしれないですが、先生ご自身は睡眠で悩まれたご経験はありますか。

西野

眠れないで悩むことはないですね。結構早く寝付けるので問題ないんですが…。でも私の睡眠、かなり不規則なんですよね。1日何回も寝たりとか。そういう人、結構いてるんです。
それは分割睡眠とか言うんですが、まあお年寄りになってくると、結構夜中に何回も目が覚めて、そういう状態にも近くなってくるんですけど、それはメリットもあって結構無理もきく、徹夜をしたりとか、時差ボケのときとか、そういう(分割)睡眠パターンだとあまり苦にならない。
とはいえメリットもあるからといって、そういうことを一般の人に推奨できるわけではない。でも、そういうパターンでも、それで具合がいいという人もいるということですね。

ーー

いい睡眠をとれているか、どうか。それを判断する材料とは何でしょう。

西野

睡眠というのは、いろんことが影響するんですよ。外の温度が高いとか、湿度が高いとか、騒音があれば眠れない、それから心配事があっても眠れないですね。そういう人、結構多いですね。どっか体が痛くても眠れない。だからいろんなものが影響を与えて、睡眠を傷害する問題を抱えている人は多いですね。
でも何のために眠るか、を考えたら…それは眠るために生まれてきたわけじゃない。日中、どれだけ充実した生活を送るかが大事で、そのために睡眠があるんですね。だから日中問題なければそれは個人差だし、それと年齢によっても変化していくんだから、それほど気にする必要はない。
例えば夜中2~3回目が覚めて困ると言っても、それは私たちの(高齢の)年になれば当然なんですね。だから同世代の人と比べて自分がどれだけひどいか、そのためにどれだけ悩んで支障が出てるかということなんですね。もう少し気楽に考えた方がいい人も多いですね。あまり神経質にならないで。

ーー

スマホをやりながら寝付くのが習慣になっている人がいますが、これはどう思われますか。

西野

それも個人差があるので、それで問題なく眠れる人は無理にやめる必要はないんですよ。
ただ、私の場合なんかでもそうですけど、寝る前にちょっとメールを見て、非常に腹立つようなことがあるとか、そういうことがあったらそれだけで朝まで眠れない。だからできるだけ刺激というか、興奮しないようにする。そういう傾向がある人には(スマホを見ないというのは)1つの対処だと思うんですね。簡単にメールチェックして、そのうち寝付くと言う人は別にやめる必要はない。
ライトも光の照射というのも問題になるんですけど、最近スマホでブルーというか、そういう光もカットされているし、そういうことよりも、脳を興奮させるというか、腹が立ったりとか、興味をもってどんどん検索することになると、それが良い眠りの妨げになるということだと思います。

睡眠と体温、最高の睡眠を引き出す方法

ーー

最後に入眠の時に大事なこととして、体温の調整のことがあると思いますが、この話を教えてください。

西野

体温というのは日内で変動するんですね。体の中の温度と表面の温度があるんですが、体の中の温度というのは昼間高くて、夜は低いんです。活動時には高くなければパフォーマンスが上がらないし、睡眠中は下がらないとダメなんですね。
それで体温といったら調整は比較的簡単で、熱を作る方と逃がす方で調節されていて、熱を作る方は筋肉や脂肪や内臓から熱が出る。夜は体の中の温度が下がらないと眠れないということになる。そのときは主に手足から熱が逃げるんですね。手足は毛細血管が発達していて、そこに、体の中と同じ温度の血液が流れ、ラジエーターみたいになっている。
赤ん坊が眠たい時に手が温かいのは、そこから熱が逃げて、その後で体温が下がるという、生理的な変化があるんだけれど、それを妨げるようなことをすると眠れない、逆に促進すると寝付きが早くなったり、深い睡眠が出る。

お年寄りなんか眠れない、寝付きが悪い、目が覚めるというのは体温調節なんかと関係している可能性があって。いろんな方法があるんですけど、寝具なんかでは特に通気性が良くて熱を逃がすようなものがいい。
それから日本人だったら入浴なんかを利用できる。入浴だと今の話と逆だと思うかもしれないですが、入浴して一時的に体温が上がったら、その後、お風呂に入らない時よりも下がるんです、そのタイミングで寝るとすぐ眠れて、深い睡眠がとれる。

ただお風呂に入ったら…実験をやった実際のデータなんですが、40度のお風呂に15分ぐらい入ったら、体の中の温度が0.5度ぐらい上がって、もとに戻るまですごく時間がかかるんですよ。90分ぐらいかかる。その90分間は逆に寝付きが悪い、眠れない。うまくタイミングを合わせば眠れて深い睡眠がとれる。
だからそういう体温の変化、体温がどのように睡眠に関係しているか、というのが、「正しい知識」なんですよね。それを知らなかったら、例えば温泉入ったら眠れる、というので、(寝る前に)もういっぺん温泉に入るとか…そんなことしたら朝まで眠れないですよね。

ーー

今回のインタビューは米国からオンラインでご出演していただいています。現在は米国を拠点にされているということで、日本へは年間どれくらい戻ってこられているのですか。

西野

コロナの前は月1回ぐらいでしたね。今は時差ぼけもきつくなってきたので、2カ月に1回とかそれ以下にしている感じです。

ーー

先生のお話を聞きたい方はたくさんおられます。日本で、リアルで先生の話を聞く機会はなかなか難しそうですが、今は米国からオンラインで先生の話を聞くことができる時代になっています。
こうした手段で、多くの睡眠で悩む方々の講演のリクエストにお応えしていただくこととかは可能でしょうか。

西野

大丈夫ですよ。(講演の依頼があれば)喜んで引き受けますよ。できるだけ、ためになる話ができればいいなと思います。一般の方々に、書籍や講演で、睡眠の役割や、より良い睡眠を取るための正しい知識を伝え始めてすでに数年になるのですが、まだまだ充分浸透できていないようにおもいます。
特に直接お話しする講演では、参加された方にできるだけ身近で有用なお話ができればといいなと思います。

ーー

西野先生、長時間に渡ってありがとうございました。

【西野氏についてこちらもぜひご覧ください】▼
【参加者の声多数あり】西野精治氏のオンライン講演実施レポート」

西野精治 にしのせいじ

スタンフォード大学医学部精神科教授、「スタンフォード式 最高の睡眠」著者

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SNCL)所長。 1955年生まれ、大阪府出身。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。1999年にイヌの家族性ナルコレプシーに...

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