食育とは?
私が生きていく上でもっとも大切にしたいことは「食育」です。この食育と出会い、私の食事の時間はとても豊かになりました。
ここ数年、耳や目にするようになった食育という言葉。平成七年に食育基本法が制定されたことをご存知でしょうか。食育とは、食に関する知識と選択する力を身につけて、健全な食生活を送るための教育を総称したものを指します。厚生労働省は、健康づくり、生活習慣予防、母子保健、食品安全などをテーマに情報提供や栄養面のサポートを食育推進としており、農林水産省は、朝食の欠食率改善、グラフを使用したバランスのいい食事のアドバイスなど、細分化した目的に沿ってわかりやすい食育推進をしています。
なぜ、食育基本法が制定されることになったのか。食育という言葉、実は明治時代から存在していたのです。
福井県出身の軍医、石塚左玄さんは、頭で物事を考えたり勉強することの知識教育、思いやりなどの心を育て、判断力や実践意欲を持たせる道徳教育、運動やスポーツに親しむために必要な素養や健康、安全に生きるための必要な身体能力を身に付ける体育教育について、「知育、徳育、体育の基本となるものは食育だ」と伝えました。頭も、心も、身体も、すべての基本は食べるものからつくられているといった考えです。
増え続ける「現代病」
私たちの住んでいる日本はとても豊かな国で、24時間、安い値段で手軽に食べ物を購入することができ、一日に、国民ひとりひとりがご飯茶碗一杯分を捨てているほど、毎日たくさんの食べ物が捨てられています。人口に対して食糧が少なく、飢餓に苦しみ餓死するような国ではありません。むしろ、多国籍な料理たちで国内中の食べ物は溢れかえっていて、私たちはいろんな料理を飽きることなく食べることができます。客観的に、とても豊かで幸せそうな国にみえますが、同時に現代病と呼ばれる病気の人々が増え続けています。
現代病とは、生活習慣病(成人病)から、情緒障害、不眠症、花粉症、化学物質過敏症、児童の肥満など、ここ数十年になって認知されるようになった病気もいくつか挙げられます。こうした現代病が増え続ける理由として、人間の精神や生活リズムに反するような労働環境が増えたことや、生活習慣、食習慣などの急激な変化、自然環境の悪化といった、まさに現代の状況を浮き立たせている背景と直結して私たちの身体に反応がでているのです。
私たちは、髪の毛から爪の先まですべて食べ物でつくられています。栄養が偏ると、腸内環境が乱れ、髪の毛がパサついたり、爪が割れやすくなったり、お肌が荒れたりと、目に見える不調が続いてしまいます。自分の身体をつくる基本となる食事に、改めて意識を向けてみませんか。
楽しくおいしく食事すること
最近は食に興味がない人やダイエット思考の人が増えて心から食事を楽しんでない人が多くなっている気がします。私が小さい頃は、誕生日の食事やケーキ、家族での外食といった特別な記念日や行事食など、食への楽しみがありました。祖母から教わったお彼岸のおはぎ作り、母に教わった故郷の煮物の味など、食の思い出は今でも鮮明に覚えています。
食事とは、悩むことではなく楽しむこと。楽しくおいしく食事することは、自分の身体にエネルギーを注ぎ、心まで満たしてくれます。携帯をみながら、テレビをみながら、本を読みながらの、「ながら食べ」にも気をつけて、食事の時間だけは、手をあわせて「いただきます」から「ごちそうさま」の間まで、姿勢を正して食事と向き合い、心を込めて召し上がってみてください。日々の食事の積み重ねこそが、心身共に健康でいられることにつながります。
中村詩織 なかむらしおり
食育スペシャリスト、食育プロデューサー、一般社団法人日本食育HEDカレッジ代表理事
「食育」とは食を通して人間として生きる力を育むこと。人と人との繋がりを大切に心の中から美しく健康になれるようにお手伝いしていきます。 1982年生まれ。鹿児島県出身。上京後、トータルボディセラピストとして勤務。(オールハンドで行う、ツボや筋肉を揉み解す全身ボディケア・リフレクソロジー・ハンドリフレクソ...