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木村悠 講演会講師インタビュー

Vol.4

“二刀流”だからこそなれた、
世界チャンピオン

商社マンボクサー、元世界チャンピオン

木村悠

フルタイムで商社の営業マンとして働きながら、世界チャンピオンになった“二刀流ボクサー”木村悠さん。商社で働き始めたきっかけは、ボクサーとしての大きな挫折でした。そこから8年間、第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオンになるまで、二足のわらじをはき続けた木村さんは、現在、働き方改革などご自身の経験を踏まえた講演会を全国各地で開催しています。これまでの経験や、これからの社会に求められる考え方を伺いました。

2016年に現役引退をされ、現在は全国で数多くの講演会をこなしておられますね。

木村おかげさまで年50~60回程度、講演会を行っています。一般企業の営業部や経営者層、商工会議所、教育機関など様々な企業や団体でお話をする機会が多いですが、最近ではJリーグのチームで、選手向け研修も担当させていただきました。
テーマはやはり、商社マンとボクサーという“二刀流”として活躍してきたことから、アスリートのセカンドキャリア、目標設定、セルフマネジメントなどについて講演をすることが多いですね。

まずはどうして、プロボクサーとして活躍しながら、商社で正社員として勤務し始めたのかを教えて下さい。

木村これはボクサーとして大きな挫折を経験したからです。元々、ボクシングは高校で始めました。千葉県の習志野高校ボクシング部に入部し、卒業後は法政大学へ進学し、大学1年生の時にアマチュアで一番大きい大会、全日本選手権大会で優勝しました。2002年のことです。
その勢いで、大学卒業後は日本でも1位、2位を争う強豪のボクシングジム・帝拳ジムに入門しました。アマチュアといえども優勝経験もあったので、当時は簡単にまたチャンピオンになれると甘く考えていました。しかし、それが大きく違いました。周りは自分より強い人ばかり、練習も厳しく、どんどん自信がなくなっていきました。
それでも、プロデビュー戦から4戦目までは順調に勝利を重ねていきました。しかし、5戦目で負けてしまった。自分の実力の無さを改めて実感し、ジムのスタッフやトレーナーから「才能が無いんじゃないか」「プロを辞めて普通に就職したら」とも言われました。

このままではプロとして厳しい。そんな中、偶然、大学時代の友人に会う機会がありました。彼らは普通の社会人です。そんな彼らが「社会に出てすごく変わった」とか「成長した」という話をしていました。自分を根本から変えるためには、社会に出て、それをボクシングに生かそうと考えました。

帝拳ジムは世界チャンピオンを多く輩出する名門のジムです。周りには“強い人”がたくさんいます。そういう強い人を見ていると共通しているのが、ただ強いだけではないということです。人間として優れている、人格者ばかりです。ボクサーとしてボクシング以外で、人間的な成長を重ねることが必須であると強く感じましたね。

それで商社に入社したわけですね。働き始めて、生活はどう変わっていきましたか?

木村ボクシングとの二刀流ということで最初はなかなか仕事が見つからず、半年は派遣社員として働きました。その後、知り合いの紹介で電力・通信関係の資材を扱う商社に就職して。営業部署に配属されました。
とにかく、最初はスケジュール管理が難しかった。それまで1日5~6時間練習があったのが、働き始めてからは最大でも2~3時間しか取れません。練習時間を最大限確保するためには、もちろん残業は厳禁。そのため、綿密な仕事の段取りが必要になりますし、ボクシング練習の質自体も挙げていかなければなりません。

そこで大切になるのが「逆算」という考え方です。1日のスケジュールを予定通りに進めるため、スケジュールを逆算して決めていきます。
僕の場合は毎日8時間の睡眠を確保すると決めていました。どれだけハードな練習をしても、体がきちんと休まっていなければ、意味がないからです。そのため、夜10時半には就寝する必要がある。なぜなら、朝6時半から走り込みなどの自主練習を行うからです。
10時半就寝なら、家には9時には帰宅したい。それなら、8時半には練習を終えて、6時にはジムに……こんな風にして時間を決めていきました。当時勤めていた会社は午前9時出社で、残業がなければ夕方5時半退社です。それまでに、どう仕事を終わらせるか日々頭を使いました。
最初の半年は、自分で決めたスケジュールをこなすのに精いっぱいでしたが、1年程経つとコツをつかめてきて、自然にこなせるようになっていきました。

ボクシングの練習の質はどういう風に上げていきましたか?

木村他の選手と比べて、僕の時間は圧倒的に少ない。なので、与えられたメニューをこなすだけでは強くなりません。いかに無駄を省き、効率的な練習を行うかが勝負でした。
ここで重要になのが、目標設定です。どういう選手になりたいのか、どんなスタイルを目指しているかという明確な目標設定をすることで「今の自分に何が必要か」「何が足りないのか」を徹底的に分析できます。これは仕事でも一緒ですが、常に目的を持った行動をすることで効率的になります。

例えば、働き始めた頃はプロボクサーであったのに、アマチュアの頃と変わらない戦い方をしていました。具体的には、プロボクサーに求められる接近戦の練習をせず、センスに任せて戦っていたんです。なので、それ以上強くなれなかった。そう気付いてスタイルを大きく変えました。フィジカル的にも弱かったので、筋力、体力を強化するトレーニングを組立て、どこを目指すのか強く意識していきました。

また、仕事では納期管理をすることも多かったので、納期日までに何を、いつまでに、といったスケジュールの組立が上手くなりました。それを減量メニューやトレーニングメニューに応用するようになり、いかに戦略的、戦術的に計画を立てて、実行していくことが重要か実感するようになりました。

目標設定のためには目的をしっかりと見つけることが必要な訳ですね。

木村そうですね、目標は立てただけでは意味がありません。その裏にある目的とセットにして決めます。
実は働き始めてから2年間、ずっと試合が決まらず、目標があやふやになった時期がありました。悶々とする時期が続いたのですが、そこで自問自答を繰り返しました。「なぜ試合に出たいのか」「なぜ試合で勝ちたいのか」。そこには試合を人に見てもらいたいという強い気持ちがありました。
サラリーマンになって、人の繋がりは増えたものの、出会った人のほとんどは僕がボクシングを趣味としてやっている程度にしか思っていなかった。それが悔しかった。
だからこそ、ボクシングをしている木村悠を人に見てもらうというのを目的に設定しました。そこからは、試合に出るという目標に向かって、矢印が向くようになりました。

試合に出るためには実力以外にも何か条件がありますか?

木村もちろん、強くなければ話になりませんが、実は強さだけで決まるわけではありません。そこがアマチュアとプロの違いです。プロは応援される人間性を備えてなければチャンピオンにはもちろん、プロにはなれません。つまり、支えてくるサポーターや、ジムのスタッフがいて初めて、試合ができます。
これは会社や社会でも同じです。どれだけ能力があって、仕事がよく出来ても、周囲とのコミュニケーションが下手だったり、印象が悪かったりしたら、出世は出来ません。なので、出世する能力とプロで活躍する能力には共通点があります。

他にも、ボクシングから仕事に生かしたことはありましたか?

木村そうですね。例えば、コミュニケーションの取り方。リングの上では前述したように、接近戦が基本ですから、相手の息遣いや表情、仕草によって自分の攻め方や守り方を変えていきます。なので、相手の立場だったら、と考えることがとても大切です。人や時によって営業トークを変えてみたり、この人ならこんなアプローチ方法がいいのではないかと考えたりして、改善を繰り返しました。

またこの能力は、応援される人間になるためにも、極めて重要です。相手にどう見えているか、相手にどう見てほしいかを考えて、相手に思わず応援したいと思えるような会話をする。または今の時代なら選手が自身のSNSで自ら自分のことを配信することもあるでしょう。その時に何を、どうやって配信するか、よく考えました。

世界チャンピオンに輝くまで8年間、二刀流を突き通しました。正直、二刀流で大変だったのではないですか?

木村もちろん、大変だった時期はありましたが、それよりもメリットがありました。二刀流が優れているなと思ったのは、二人の自分を持つことができる点です。例えば、会社で調子が悪くても、ジムにいければ切り替えられる。逆もあって、ジムで調子が悪くても、仕事で気分を切り替えることができます。1つのことに集中することも必要ですが、その1つが上手くいなかった時、人は追い詰められてしまいます。だからこそ、色々な道を持っていることで気持ちを分散でき、良いバランスで仕事も、練習も取り組めました。

最初は邪道だとかネガティブな意見を言われることもありましたが、信念を持って負けずに進むことで、仲間になってくれる人も徐々に増えていきました。仕事を続けられなければ得ることの出来なかった人脈、出会いが数え切れないぐらいありましたから、二刀流を続けてきて、良かったと思っています。

現在は、そんなご自身の経験から、働き方改革の講演に力を入れておられます。

木村はい。どれだけ優れた制度があっても、働く人の意識が変わらなければ、働き方改革はできません。そういった意味で働き方改革は「働く人の意識改革」なんですね。

意識を変えるには、プラス思考が大きな役割を果たします。プラス思考には3つのプラス要素があり、まず「こうしたい」というプラスの事象をイメージすること。そして「最高」「ありがとう」といったプラスの言葉を発すること。最後に、ガッツポーズや笑顔といったプラスの行動をすること。これは後者になればなるほど、強い作用があるので、プラスの行動を実行に移すことでプラス思考になっていきます。
僕が選手として活動していたときも、このプラス思考は非常に大切でした。なので、現役を引退してから、メンタルトレーニングの「サンリ」で資格を取り、このプラス思考を実践する立場から、伝える立場として活動しています。
一流のアスリートはプラス思考の持ち主ばかりです。調子が優れないとき、上手くいかない時に調子の良い時のルーティーンやプラスの行動を実行することで、プラスの結果を生みやすくなります。
プラス思考になることで、人生におけるチャンスの数も違ってきます。能力はあるけど、いつもふて腐れている人よりも、能力がすごく高くなくても常に笑顔を絶やさず、前向きな思考をする人の方が一緒に仕事をしたいと思わせてくれるし、そういう人に周りはチャンスを与えてくれます。スポーツも、仕事も周りの応援が無ければ、実現できないことばかりです。応援される人間になるためには、プラス思考が必須です。

また健康経営というテーマにも取り組んでいます。プロボクサーとして活動し始めた頃、減量が苦手でした。いくら取り組んでも体重が減らない。そんなときに、とあるメソッドに出会い、驚くほど減量が楽になりました。そこで現役引退後、食アスリート協会のジュニアインストラクターの資格を取得しました。量が少なくても満足できる食べ物の種類や組み合わせ、食事を摂るタイミングなど食生活の話は興味を持つ人が多いですね。
体は心を作ります。まずは、体が元気になる食事を作ることで、うつ病などの心の病も防止することができると思っています。

今後はさらにどんなことに力を入れていきたいですか?

木村まずは、ボクシング競技の普及活動ですね。記事の執筆やオンラインコミュニティでの交流会など大好きなボクシングをさらに広げていきたいと思っています。
そして、アスリートのセカンドキャリアにも力を入れています。アスリートにセカンドキャリアを持つことの大切さに気付いてもらう、そんな機会を作りたいと思いますし、アスリート個々への就職相談や企業紹介もしています。
新しいことにチャレンジし、最近やっと形になってきました。時代が変化している中で、自分の思考も変化させ、時代にあったものを提供していきたいです。

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