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山田知生 講演会講師インタビュー

Vol.7

ビジネスマンはアスリート
スタンフォード式・意識改革で
国際社会を勝ち抜こう

スタンフォード大アスレチックトレーナー

山田知生

累計20万部超えの売り上げを誇り、ベストセラーとなった「スタンフォード式疲れない体」。著者はスタンフォード大学スポーツ医局で長年、アスレチックトレーナーとして活躍し、数多くのトップアスリートを運動、食事、生活、メンタルの面で支えてきた山田知生さんです。
24歳までプロスキーヤーとして活動し、その後アメリカの大学、大学院に進学。2002年秋からトレーナーとしてスタンフォード大学で勤務してきました。また現在は、同大学のアソシエイトディレクターとして局内のトレーナーの指導役を担っています。
渡米のきっかけや執筆に至るまでの経緯、アメリカから見た日本のスポーツ界などを山田さんに聞きました。

プロスキーヤーから一転、アメリカに渡って大学に進んだのはどうしてでしょう?

山田スキーヤーとして海外の雪山に遠征する機会があったときに、現地の友人からアメリカなら年齢に関係なく、学び直す風土があると聞いたからです。
ちょうど日本で高校を卒業した後は、大学に行く人と行かない人が極端に分かれていた時代。大学に行く人は、具体的な目標はないけれど親に「行け」と言われたから「行かないといけない」と思っていた人が多くいた印象でした。一方で僕はその頃夢中になれるもの(スキー)があったから行く必要を感じませんでした。
当時は国内外をスキーヤーとして回りながら、スキーインストラクターとしても仕事をしました。そうして社会に出るようになると、だんだんと自分の足りないものを自覚するようになりました。その時に大学で勉強したい、アメリカに行こうと決めました。

実は、大学入学前は紛争地などを回り報道する国際ジャーナリストに憧れていました。アスレチックトレーナーという職業を知ったのは、大学1年生の時に参加した学内スポーツイベントでたまたま怪我人の治療をするテントに足を運んだ時でした。選手として「される」側から逆に「する」側になったことがとても興味深く、それからアスレチックトレーナーの授業を取るようになりました。とにかく覚えることが楽しくてしょうがなくて、大学で4年、さらに大学院に進学して4年学び、スポーツ医学、スポーツマネジメントの修士号を取得しました。

アスレチックトレーナーとして2000年に活動を始めて、その2年後の秋には現在勤めているスタンフォード大学スポーツ医局に入局されました。具体的にどういったことをしていますか?

山田アスリートのサポートです。具体的に言えば怪我の予防と怪我をした後のリバビリテーションなど多岐に渡ります。
その中で、特に意識しているのがいかに効率よく選手に練習を行わせるかです。アメリカの選手は学業との両立のため、練習時間は週20時間のみ。そのためトレーナーは常に限られた時間の中で選手をどう強くするかを考える必要があります。
例えば、選手個人でできることはその選手に任せてしまうのも1つです。練習前にビデオなどを使って個々の修正点や試合の分析をさせ、練習では他のチームメイトと合わせる作業のみをする。もちろん、それでうまくいかないときもありますが、選手がよく理解をしてきてくれれば、練習も早く終わります。
また、怪我予防の為の運動などのやるべきことを選手、アスレチックトレーナー、コーチで共有をしておき、選手が1人でできること、アスレチックトレーナーと一緒でないとできないことを見られるようにしました。以前はアスレチックトレーナーが付きっきりで選手をサポートするというのが当たり前でしたが、こうすることで選手の自主的な行動も促すことができます。

こういった効率化は選手と同様に勤務時間が限られているアスレチックトレーナーの効率性を上げることにもなります。特に07年からは同局のアソシエイトディレクターに就任し、医局にいる全ての人材の管理をすることが大きな仕事となったので、人の時間管理と勤務の質には常に心がけています。

ディレクターというと管理職のポジションですね。アスレチックトレーナーとはまた違った立場です。

山田そうですね。管理職を担う上で重要になるのは、人間的な目標を共有することです。職業的な目標、つまりスペシャリストとして具体的にどんな技術や仕事を達成したいかということはもちろん大切ですが、見逃されがちなのがジェネラリストとしての目標です。
毎年、局内のアスレチックトレーナーやセラピストとして今年1年をどういった年にしたいか、そして人としてどういった人間になりたいかというゴールセッティングをする面談の機会を1対1で設けます。局内には様々な人間がいますから、中にはスキルはあるがコミュニケーションを上手く取れない人、話を感情的に受け取ってしまう人などもいます。

人間はだれでも同じ事をやり続けると頭打ちになります。また考え方に変化や柔軟性がなくなるという科学的な研究結果が出ています。つまり、同じ業務に就いていれば、スランプに陥るときが必ずあるということです。その時に、人間性を高める訓練をしていれば、新しい自分を発見する事もでき、気持ちのコントロールも上手くでき、ストレスの解消法を見つけるなど突破口を見つけることもできます。

一方、これが職業人としてしか発達していないとどうしても狭い視野でしか物事をみられなくなります。だからこそ、2つの目標を持つことが重要になってきます。
トレーナー達には3ヵ月、半年、1年といった周期で年度初めに設定した目標をどれだけ達成できたかを見直してもらっています。また、常々どんな時に自分が自分でなくなったかメモを取り、1年の最後に自己評価して、僕に提出してもらいます。

この人間性の向上を図ることをパーソナルディベロップメントと呼ぶわけですが、このことは本当に人間としての基本です。会社内での縦、横のつながり、人間関係を良くしようと思えない人は、人の上に立つことになってもスペシャリストとしても成功することはできません。逆に、この基本ができる人はスペシャリストとして優秀な存在になれます。人間性が高く、コミュニケーション能力が高い人は、人や選手の心情を感じ取りながら、メンタルサポートもできるようになります。それができなければ、トレーニングは一方通行的なものになってしまいます。

“外国人”としてそういったコミュニケーションを行うことにハードルはありませんでしたか?

山田確かに語学的なことを言えば今でもハードルはあるのかもしれません。しかし、人はこの人は自分を成長させてくれる人だと思えば、その人を尊重するものです。それはアメリカに限らず、どこの国に行っても同じだと感じます。
最初は僕が東洋人だからそんなことを言っているのではないかと思った人もいるかもしれません。ただ、僕はなるべく客観的なことを彼らに示そうと心がけています。
例えば、発言を個人的に捉えて怒ってしまったり、公の場で発表するときにネガティブな発言をしたりする人がいたとしましょう。その時に「僕はあなたのこんな所が嫌いだ」といった主観的な意見ではなく、そういったことが起きた具体的な場面やそれが何回起きたかなどの客観的な意見を伝えます。そうして初めて「こんな本を読んでみたら?そして2週間後にもう1度ミーティングしよう」とか「○○セミナーに行ってみて」といった提案をします。解決法を行ってみて、実際に結果がどうなったかをまた本人にフィードバックします。

ベストセラー「疲れない体」はどのようなきっかけで書くことになったのでしょうか。

山田過労死という言葉がアメリカでも浸透しているように、「疲労」は日本の大きな社会問題です。日本人の1人としてこの社会問題を解決したいと思っていました。ジャーナリスト精神というか、そういった気持ちは脈々と続いていて、本という形になったと思います。
健康は運動、睡眠、食事、考え方といった1つ1つが独立しているのではなく、すべてが連動しています。本も「ただ○○をやっていればいい」という内容ではなく、全てが大切でそれぞれをWHAT(何を)、WHEN(いつ)、HOW(どう)、するかを細かく書きました。

そういう点で今回は、健康について初歩的なことを書きました。アスリート向けの専門知識を書いても、たくさんの人の手には取ってもらえない。だから、一般の人が「今日からできる」内容に仕上げました。分野は違っても、ビジネスマンもアスリートと同じ「選手」です。日本を支え、国際社会で戦っています。勝つためにはただ物事をこなすだけでなく、よく寝て、よく食べて、ポジティブな考え方を持つことが大切になってきます。
いつどう寝て、何をいつどう食べ、いつ何を運動して、どう物事を捉えるか?という考え方を持つことが大切になってきます。

アメリカでは健康は文化です。自分の人生を、ライフスタイルを良くしたいと多くの人が思っています。特にシリコンバレーで働く人や経営者層は健康への意識がより強く、一般の人でも積極的に運動を取り入れ、体調を管理しています。日本はというとまだまだそういった考え方はマイナーで、夜遅くまでへとへとになりながら仕事をやっている。僕の目から見て「毎日をこなしている」、そんな印象です。それでアイデア、生産、販売、マーケティングなどの面で国際社会を勝ち抜くことはできません。正しい知識を元に、規則正しい生活をすることで「日本代表」の気持ちをビジネスマンに持ってもらいたいと思っています。

もちろん、そういった考え方は上司も理解しないといけません。今の20代、30代は健康志向、家庭志向の人も多いと思いますが、いくら社員が頑張っても、上司や経営陣が同じ理解をしていなければ現実にはできません。そのため、健康はそれを知るという姿勢と、上司が理解するという2つの意識改革が必要です。

意識改革はどの世界でも求められていますね。

山田特にスタンフォード大学では2012年以降、この意識改革が徹底されました。大学が決めたことと合わない、または何度言ってもルールを守れないコーチや監督は世代交代の波の中で辞めさせられました。
たとえ、その人がオリンピックコーチであっても、30年以上務めてきた人物であっても同じです。実際1970年、80年代の練習スタイルを実行し、20時間の練習時間を守らなかったり、選手とコミュニケーションを上手く取れなかったりした監督やコーチらは選手からも不満の声が上がっていました。

ただ面白いのが、この意識改革以降、スタンフォード大学のスポーツはさらに強くなっていることです。もう20年以上に渡って、スタンフォード大学は全米ナンバー1のスポーツ大学として君臨していますが、2019年は前年に比べて大学選手権で優勝するチームの数が9つに増え、総合成績が向上しました。そして大学選手権が終わっても、選手がイキイキとしています。まだまだ体力が残っていて、勉学にもきちんと集中できる環境があります。
また医局のトレーナーの年齢層は低くなり、ぐっと若返りました。トレーナー達が選手と同じような年齢層で、感覚が似ているということも功を奏したのだと感じています。

こういった新しい改革を思い切ってやることは重要です。僕の目には日本がまだまだ新しいことにチャレンジすることや変化に対して積極的でない環境、現状維持をよしとする環境を持っているように映っています。若い世代の意見を尊重することは非常に大切なこと。そして積極的に若い世代からアイデアを引き出す必要があると信じています。

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