講演会・セミナーのキャスティング、講演依頼は講師派遣ナビコラム・インタビュー【講師コラム|木山美佳】タイパ至上主義時代の「対話型」組織づくり~生成AI時代、効率化の先にある「人への投資」~

【講師コラム|木山美佳】タイパ至上主義時代の「対話型」組織づくり~生成AI時代、効率化の先にある「人への投資」~

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目次
  1. 効率化の波で削られるもの
  2. 「上司の時間を奪う」のが怖い若手たち
  3. 「それくらいは考えれば分かる」と思う上司
  4. 生成AIは上司の代わりを担える?
  5. タイパの追求が、かえって非効率を生むパラドックス
  6. 今の時代、省いてはいけないもの

効率化の波で削られるもの

生成AIの普及により、資料作成や情報収集、文章作成など、多くの業務を短時間で処理できるようになりました。コミュニケーションにおいても「それ、メールでよくないですか?」「で、結論は何?」。こうしたやり取りは、今や職場では珍しくありません。タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する価値観は、私たちの働き方そのものを大きく変えています。

産労総合研究所は2026年3月、2026年度の新入社員タイプを「世代をつなぐ 大阪・関西万博タイプ」と命名し、「生成AI活用」「タイパ・コスパ・メンパ(メンタルパフォーマンス)重視」を特徴として挙げています。しかし、タイパを重視しているのは若手だけではありません。管理職は限られた時間で成果を求められ、経営層も短期間で結果を出すことを期待されています。

効率化は、生産性を高めるうえで多くのメリットがあります。しかし、その中で真っ先に削られやすいのが、人を育て、信頼関係を築くための「対話」にかける時間です。

もちろん、目的の曖昧な会議や、同じ内容を何度も確認する非効率なやり取りは見直すべきでしょう。しかし、信頼関係を築き、人を育てるための対話まで削ってしまっては本末転倒です。これからは、「削る時間」と「確保する時間」を見極めるバランス感覚が求められています。

例えば、「1on1ミーティングは必要だと思うが、その時間が取れない」という管理職の声をよく耳にします。これは個人の努力だけではなく、組織全体で取り組むべき課題です。それなのに私たちは、いつの頃からか、対話の時間を「省いてもよいもの」に仕分けるようになってしまったのではないでしょうか

「上司の時間を奪う」のが怖い若手たち

タイパ時代、若手社員からは「同じことを何度も聞けない」「上司が忙しそうで話しかけにくい」「上司に呼ばれるのは、注意される時か急ぎの仕事を頼まれる時だけ」といった声が聞かれます。

最近では、「上司に話しづらいことは、生成AIにこっそり相談している」という若手もいます。退職理由を尋ねたら「チャッピー(ChatGPT)に相談して決めました」と言われ、頭を抱えたという管理職の話も耳にします。 上司には話しづらいけれど、AIには本音が言える――。この「AIには言えて、組織の人には言えない」という現象にこそ、現代の組織が抱える本質的な課題があります。

「それくらいは考えれば分かる」と思う上司

かつては、組織には似た価値観や経験を持つ人が多く、「普通は分かるよね」が通用する場面も少なくありませんでした。しかし、多様な世代や価値観を持つ人が共に働く現在、その前提は日に日に通用しにくくなっています。

研修でも、「当然知っていると思っていたことを若手は知らなかった」という声を管理職から数多く伺います。これは能力の問題ではありません。育ってきた環境や経験、前提知識が違うだけなのです。

生成AIは上司の代わりを担える?

一部は担えます。しかし、すべてを代替することはできません。

AIが答えられるのは、本人が質問できたことだけです。

生成AIを使えば、それなりに整った成果物は作れます。しかし、「何が分からないのか分からない」まま仕事を進めてしまうこともあります。

相手の理解度を確かめ、背景を共有しながら問いを投げかけ、経験を意味づけていく。それは、人と人との対話だからこそできる営みです。

タイパの追求が、かえって非効率を生むパラドックス

ある管理職の方から伺った事例です。

メールを送るたびに「相手の立場に立てていない」「気が利かない」と注意される新人がいました。何度伝えても改善せず、上司は細切れの指導に多くの時間を費やしていました。上司は「なぜ分からないのか」と悩んでいたそうです。

しかし、対話を重ねる中で意外なことが分かりました。部下は、その前提となる「相手の立場」が分かっていなかったのです。相手がどのような役割を担い、そのメールを受け取った後に何をするのか。その仕事の流れが見えていなければ、気を利かせることはできません。

「気が利かない」のではなく、「気を利かせるための前提」を知らなかったのです。

注意を繰り返すだけでは、この事実には気づけませんでした。対話を重ねたからこそ、本当の原因が見えてきたのです。急がば回れ。対話を省くことこそ、結果として最も大きな時間の損失につながってしまうこともあります。

今の時代、省いてはいけないもの

生成AIなどによって生み出された時間を、さらなる効率化だけに使うのか。それとも、人への投資に使うのか。対話は人材育成の重要な手段です。対話の時間を「省けるもの」ではなく、「確保するもの」へと発想を変える。その積み重ねが、生成AI時代に求められる組織の土台づくりとなるのです。

木山美佳 きやまみか

キャリアコンサルタント、レジリエンストレーナー、組織のすれ違いを解消する対話の専門家、株式会社キャリ・ソフィア代表取締役、一般社団法人ダイバーシティ人材育成協会代表理事

大手人材企業・テンプスタッフ(現・パーソルテンプスタッフ)にてキャリア面談や人材ソリューションに従事。コンサルタント評価ランキングで、人材会社各社約660名中、西日本トップ5に選出される。その後、JAL(日本航空)グループの研修会社「JALアカデミー」にて講師・教務・教材開発を担当し、多種多様な企業の研修...

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